日本の科学技術の未来は明るいぞ・上野中学校の皆さんの作品
 今回の投稿作品はボリュームありますよ。ボリュームありすぎて、写真をいただいてから紹介するまでに、ずいぶん時間がかかってしまいました。スミマセン。

 神戸市立上野中学校で技術科を教える加賀江孝信先生から、中身のみっしり詰まった封筒を受け取ったのが3月のこと。封を空けると、先生のお便りと1枚のCDロム、そしてホッチキスで綴じられた分厚いレポートの束が出てきました。加賀江先生は、昨年の夏休みをはさんで数ヶ月に渡り、「からくりの素」を教材とした授業をおこなってくださったそうです。CDロムに納まっていたのは、授業で作ったホワイトモデルを改造して生徒さん達が夏休みに作った、50点を超えるオリジナル作品の写真。そしてレポートには、その作品のスケッチと、制作後の感想や自作のPRなどが綴られていました。   

 この本を出版する際に、出版社に無理を言って各機構の単品キットを準備してもらったのは、正にこういうシチュエーションを期待してのこと。いくつかの学校で活用していただいているという話は耳にしていましたが、実際の完成品を拝見し、子ども達の生の意見を読む機会は初めてでした。本に載っている応用作品は高校生の作品ですから、中学生にはちょっと難しい課題だったんじゃないかなぁと心配したのは全くの杞憂で、制作に関わる技術的な問題で苦心した話から、何をどう動かすかというアイデア出しに悩んだ話、そして自分で決めたモチーフを展開図に起こす際の苦労話(高度!)まで、僕の予想をはるかに超えて、深いところまで味わってもらえたようです。

 本当はここで全ての作品を紹介したいところなのですが、上野中学校の皆さんごめんなさい、さすがに全部は厳しいので、気に入った作品の中から何点か紹介させていただきますね。なお今回は、学校とご本人達の了承をいただいて、すべて実名での紹介です(代わりにペーパークラフト1冊ずつ売りつけたなんてことはございません)。
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 まずは神戸市や兵庫県の研究大会で展示していただいた際の写真です。それぞれの作品の土台になった機構ごとに分け、「からくりの素」や「趣味悠々」の本も一緒にご紹介いただいてます。これは宣伝効果高そうです。こうやって学校単位で広がって行くと出版社にも恩返しできる(し、僕も心穏やかに日々を過ごせる)なぁ。ありがとうございます。

 カムBを応用して作ったラッコちゃん。北山日菜さんの作品です。ラッコを立体的に作るのが難しかったとレポートにも書いてありましたが、単純な立方体の組み合わせじゃなく、ななめの面をとても上手に使ってますね。カムと連動して貝が上下するしかけだったらすごいです。
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 お次は藤原直樹君の作品。ギアBの応用で、真面目な顔したランナー2人が延々と追いかけっこを続けるシュールな作品かと思ったら、カムCを使って抜きつ抜かれつを繰り返す、躍動感溢れる作品でした。
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 龍季弥君の作品は、クランクAを応用したクモ。ディズニーのドナルドで僕も使った動きです。この動きに気づいたこともさることながら、作り込みの丁寧さが際だっていました。レポートのスケッチはそうでもなかったから(龍君、ゴメン)、立体向きの才能があるのかもしれません。
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 そしてこれも同じくクランクA。荒金大翔君の作品です。普通は上向きの動く部分を横に向けた作品は、本に収録した高校生作品にもありましたが、まさか下に向ける人がいるとは思わなかった。現物をいじくり回して初めて出てくる発想だと思います。
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 井上春香さんの作品。カムBをシーソーに見立てるって案は他にもいくつかあったんですが、中にビー玉を仕込んだ所がアイデアです。ビー玉の重さに耐えられるよう、試行錯誤した経過もレポートしてくれました。
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 お次は隈元健君。体の半分以上が水面下に潜り込んでしまう動きは、写真で見るだけでもかなりダイナミックです。リンクを足したり穴を広げたり、元のモデルをけっこうあっちこっちいじってくれてますね。これは僕の仕事にも使えそうかも。
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 そして最後は僕の一番のお気に入り、目から鱗が何枚も落ちました。山口夏美さんが作ってくれたのは、包丁がひたすら上下してきゅうりを輪切りにするだけの。素晴らしくくだらない作品です。念のために言っておくと、「くっだらね〜(笑)!」というのは、現代からくり界では最高の褒め言葉とされています。これは是非動画で見てみたい。
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 というわけで、他にも面白い作品がいっぱいあるんですが、ひとまず今日のところはここまで。上野中学校の皆さんと加賀江先生、本当にありがとうございました。自宅のPCにも画像を移して、時々疲れた時にビール飲みながら眺めて元気もらってます。
 上野中学校では今年も引き続きペーパークラフトを使った授業を続けてくださるそうです。次回の投稿も楽しみにしていますね。このコーナーに載ったら技術の点数10点アップ、実名OKなら更に5点追加、なんてルールがあるとかないとか・・・(2010/5/5)