図工室引っ越し記念・お蔵だしギャラリー
 11月の頭に仕事場を引っ越しました。2000年に越してきて以来6年以上を過ごした、築年数および全体構造および入口の数および入居者不明の以前の事務所もなかなか味があって好きだったのですが、図工室メンバーの数も4人に増えてから何年も経ち、さすがに手狭になってきました。
 移転にそなえて仕事場を片づけていたら、押入の奥から以前の引っ越し以来開けたことのなかったトランクケースを発見しました。中には、少なくとも6年前、ものによっては10年以上昔に作った紙の作品がぎっしり。思わず整理の手を止めて思い出にふけってしまいました。今見返すと赤面ものの作品がほとんどですが、なんだよ、意外とちゃんと仕事してんじゃんオレってモノもチラホラ。
 当時はインターネットも普及しておらず、作った作品を発表する手段は限られていましたし、デジカメが進歩した現在ほど気軽に写真に残しておくこともできませんでした。家賃は割りカンなのに全体の収納スペースの半分以上をかさばる紙工作で使ってしまっている僕としては、泣く泣く処分せざるを得ません。その前に、せめてもう一度くらいはこの場で日の目を見させてあげようと思います。おじさんの懐古モードってあんまり格好いいもんじゃないんですが、本当はこの作品なんかより個人的にはずっとずっと感涙ものの、学生時代の彼女の写真とか二十歳の頃の日記とかいろいろ詰まってたんですよ。そっちを見せつけられないだけまだマシかと思って、どうぞお付き合いくださいまし。
 まずは季節柄クリスマスのリースから。これは十数年前に某スーパーチェーンの店内バナー用に制作したものです。完成品では真ん中の穴からサンタさんが顔をのぞかせる仕様になりました。ペーパーセメントを使って下書きのコピーを色紙に貼り付けて、ひたすらシコシコ切って作りました。中途半端な立体具合が甘いですねー。
 車が白い紙をぶち破って飛び出してくるシーン。けっこうカッコいいアイデアだと思うんですが、実は何かの本で見たアイデアをパクったものなのでした。この頃は人に作ってもらうなんて事は考えていなかったので、裏から見ると自分でも再現不可能ないろんな誤魔化しをやってます。
 車つながりでこちら。キットのページで紹介しているトヨタのお仕事の後、接着剤を使わない差し込み式のペーパークラフトに興味を持ち、同じ技法で何台か作り貯めました。この技法はずいぶん長い間使っていないので、今やれと言われたらできないかもしれません。
 ガラリと変わって切り絵調の半立体イラスト。これは今でもお世話になっている医薬関係の出版社のお仕事で、病院で配布する、骨を強くする食材を紹介するチラシのためのものです。当時はイラスト手配も含めてデザインを引き受けて、絵は自分で描いちゃうなんてこともちょくちょくやってました。二十代一人暮らし家賃7万のフリーランスのデザイナーは、そんだけ働けば一月くらいは暮らしていけたもんでした。
 お次も同じ用途の半立体イラスト。人物を描くとデッサンの甘さが途端に浮かび上がります。でもこのイラストを使った16ページの小冊子、とても評判が良いそうで、毎年重版を重ねなんと10年以上経った今でも使われ続けているそうです。しまったー、印税契約にしとくんだったー。骨粗鬆症という病気の予防法を紹介したもので、大きな病院の婦人科や整形外科などで配布されているかもしれません。見かけた方は是非ご一報を。
 そして最後は写真だけが残っていたこの作品。デンマークで個展を開いた時に、ギャラリーの入口に飾りました。僕の住んでいた町の名前「プレスト」は、英語の「プリースト=司祭」にあたり、町を開いた偉いお坊さんにちなむものだそうで、その絵柄は町のシンボルマークにも使われています(右)。顔はロン毛だった当時の僕、のつもりです。個展の前日に突然思い立ち、夜中までかかって突貫作業で作りました。今にして思えば神をも畏れぬ異教徒の仕業ですが、町の人たちは笑って許してくれました。
 てな感じで。こんな文章書いてたら、柄にもなく昔の事をいろいろ思い出してしまいましたよ。明日死ぬんじゃなかろうか。あ、でも明後日締め切りが入ってるから無理だな。気分転換はこれくらいにして、やりかけの仕事に戻りまーす。