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2002年
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2002.11.26 どっかの銀行の給料が高すぎるって記事がきのうの日刊ゲンダイに出てたけど
時々、ごくたま〜に、海外からの問い合わせのメールが届きます。
『私の国であなたの作品は売っているのか?』
という問い合わせには『申し訳ないけど売ってないんだ。ゴメンナサイ。』で済むのですが、
『私に送ってくれることは可能なのか?』
と聞かれると、答え方に苦労します。可能か不可能かっていわれるとイヤそりゃこの文明社会、不可能ってことはないんだけどね。『カード決済ができないから支払いは振り込みか小切手で。送料は2〜3000円かかるけどそちらで負担してもらって、代金到着後発送します。不便でごめんね。』と答えると、2人に1人はそのまま返信が来なくなりますが、広い世界『それでもいいから買いたい』という、ありがたい人がいるのです。
先月、台湾からそんなメールが届きました。からくりを全種類2個づつ買って、一組は自分に、一組は作って彼女へのクリスマスプレゼントにしたい、彼女と二人で長い間夢見ていたんだ!とのこと。そんなこと言われてメンド臭いから勘弁してくれと言える人間がいたら、それは鬼です。そういうわけで、郵便局で送料調べてメールで何度かやりとりして組み立て説明図を英訳して送ることになりました。ぼくの知識では、日本円に換金する時の手数料が一番安いのが郵便局の国際為替だったので、その辺ちゃんと説明したつもりだったのですが、翌週とどいた速達には何故か銀行小切手が入っていました。こちとら江戸っ子(ウソ)、今さら手数料分を追加で寄こせとは言えません。涙を飲んで銀行に行って、手数料を支払って換金したのでした。
それにしても、額面に関係なく手数料3100円也は高すぎやしないかい?次回からはやっぱりこっそり現金作戦にしようと決心しました。
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2002.11.16 運動不足の話・・・のつもりが釣りの話
仕事場の入っている雑居ビルの下の階にダンス教室が引っ越してきました。平日は気をつかってくれて、音が気になることはほとんどありませんが、週末になるとここぞとばかりヒップホップやらユーロビートやらをガンガンかけて、パソコンに向かっているとお腹にズンズン響いてきます。いったいどんな人たちが踊ってるんだろうか。仕事場の三人で体験入校してみようかなんて言ってますが、野郎のレオタード姿なんか見たくもないのでたぶん言ってるだけでしょう。
運動というものを、ここ数年間まったくしていません。プロフィールのところに「趣味=釣り」なんてこと書いていますが、釣りが運動に入るかどうかはともかくとして、釣り堀以外のところで竿を出したのはこの3年間で5回にも満ちません。近々「趣味=釣り堀」に書き換えます。
デンマークに住んでいた時は、アパートのすぐ裏手がすぐ海で、窓から海の様子を眺めて、コンディションが良い時はホント気軽に釣りに行っていました。向こうでの釣りのメインターゲットというのはマス、デンマークには川がほとんどないので、海マスをルアーで狙います。車で5分ほど行くと、いい具合に遠浅になっている所があって、ウェーダーに着替えてザブザブと200メートルくらい入っていって、8フィートほどの竿で20グラムくらいのルアーを1時間くらい投げていると、けっこうな運動になったものでした。あちゃらの法律では40センチ以下の海マスはリリースしなければいけないと決まっています。てことは、それ以上の大きさのものが釣れることが多いってことで、これは日本の渓流でトラウトを狙っている人たちからするとうらやましい話かもしれません。ただでさえ暴れるマスですから、50センチオーバーともなるとキャッチするのも一苦労で、15分くらい格闘して網に入れた瞬間はまさに至福。その晩は興奮して寝付けませんでした。ただしこれは釣れればの話。ぼくはマス狙いだけで50回以上出かけたと思いますが、釣れたのはたったの5匹です。やっぱ釣り具は日本製じゃないとな。それでも魚を生で食うことのない国ではなかなか手にはいらない新鮮な魚、3枚におろして刺身でおいしくいただきました。
んーと、あんまりワークショップノートと関係なくなって来たな。次回は紙工房とKeiCraftとの間で繰り広げられている、互いの紙工作人生をかけた熱く壮絶なバトル(in 釣り堀)について書く、かもしれません。
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2002.10.29 代々木で良かった
代々木に仕事場を持って2年半になります。東京に住んでる人の感覚だと「代々木のデザイン事務所」というのはあんまりピンとこないかもしれません。やっぱり青山とか表参道じゃないかと。これは、ぼくの住んでいる大田区と、相方のコンダ君が当時住んでいた幡ヶ谷とのだいたい真ん中くらい、といういい加減な理由で決めたのですが、決めた当時は思いもかけなかった良いことがいっぱいありました。
まずは、昼飯を食う店が豊富で安いこと。なにしろ天下の代々木ゼミナールのある街で、メインターゲットは学生さんですから。以前表参道のデザイン事務所に勤めていたときは、ランチでまともなものを食おうとすると1000円は下らず、そんなお金毎日払える身でもなかったので、天気の良い日は公園でパンと牛乳で済ませていました。それがかれこれ10年前。代々木では今でも650円あれば立派な定食が食べられます。ちょっと味を我慢すれば500円でも大丈夫、800円あれば寿司屋に入れます。持ち帰りの総菜屋さんもしのぎをけずっていて、おにぎりにおひたしときんぴらとニシンの煮付けをつければ栄養面もバッチリ。これには大変助かっています。
次は南新宿の発展ぶり。これは引っ越す前からのことですが、紀伊国屋書店と東急ハンズに徒歩10分以内で行けるというのは貴重です。デザイナーの強い味方、バンフー出力センターも1キロ圏内にあるので、自転車便でのデリバリーが無料というのも大助かり。最近は洋服屋さんも新宿南口にどんどんできているので、資料や画材の買い出しのついでにプライベートの買い物もほとんど済ませるようになってきました。
そして最後に、これはあんまり大きな声では言えないけれど、打ち合わせに足を運んでくれる人が以前に比べて格段に増えたということです。山手線、総武線に加えて、大江戸線ができたっていうのが大きいのでしょうか。以前大崎の自宅で仕事をしていた時は、打ち合わせが一件入ると半日近く時間を見ていたのですが、こちらに越してかららは「あぁ、代々木ならうかがいますよ」と言ってくれる人が増えました。決して外に出るのがイヤなわけじゃありませんが、時間の詰まっている時はとても助かります。それから、打ち合わせで近所に来たからついでに寄ってみた、という友だちも増えています。突然フラリと遊びに来てくれて、コーヒー飲んで世間話して、気分転換してもうひとがんばり、ってのがよくあるパターンですが、最近は、うーん、もう仕事やめ!このまま飲みに行こう!というケースも急増中です。飲み屋も豊富なんだ代々木は。これが良いことなんだか悪いことなんだかはよく分かりません。
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2002.9.6 入稿当日
今日「背中に湿疹」を入稿してきました。予定していたよりもずいぶん遅くなってしまいました。7月の時点で9割5分くらいできあがっていたのですが、依頼されて作る仕事とは違って明確な締め切りがないせいで、残りの5分の作業が他の仕事に押され延ばし延ばしになっていたのが理由の1つ。もう1つの理由は、生来の往生際の悪さです。これで最後と思いながら細かい部分のチェックをして、あ、やっぱりここ直そうと思って少しいじって、不安だからもう一度作り直して、うわ、ここも影響してくんのかと気づいてまた少し直して、たぶん大丈夫だとは思いながらもう1回作って・・・こんなことを繰り返しているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。入稿は神田にある出版社でおこなうのですが、時間は必ず午後にするようにしています。朝仕事場に来て本日入稿予定のデータを見直すと、必ず直したくなるところ見つけてしまうので、毎回電車に乗る5分前までバタバタです。
紙工作なんて細かいものを作っていて、しかもこんなことを書いていると、きっと坂ってのはとっても几帳面なヤツだろうと思うかもしれません。でも残念ながらこの神経症的能力が発揮されるのは仕事だけ。幼い頃からずっと身の回りの整理整頓ということができない特異体質でした。電話をかけるたびに名刺ファイルをひっくり返し、買い込んだ紙もどこに何があるのかわからないから毎回買い直し。メールソフトのアドレス帳すら未だに使ったことがありません。最近仕事場が4人になって一人分のスペースが減ったせいで、各人には一層の整理整頓能力が求められているのですが、相変わらずぼくの机のまわりだけは地獄のようです。時々、俺って人生の時間の10分の1くらい捜し物してるよなぁと思います。入稿終わってすっきりしたから、明日は大掃除でもしようかなと珍しく思ったりして。
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2002.8.28 夏の締めくくりのDYNAMITE!
残暑と夏休みボケでなまった心と体に喝を入れるべく、昨日仕事場の四人で史上最大の格闘技イベント「DYNAMITE!」を見に行ってきました。実はぼくはこれが生まれて初めての格闘技生観戦でしたが、格闘技を語らせると6時間コースと12時間コースの2つの選択肢しかないコンダ君の解説のおかげで大変楽しめました。一番安い席だったので、観戦はほとんどオーロラビジョンでしたが、テレビでしか見たことのない選手達が目の前で試合をしているという臨場感はやみつきになるかも。試合的に一番おもしろしろかったのはノゲイラ対ボブ・サップ。吉田秀彦もよくやった。しかし何と言っても最高に盛り上げてくれたのは、空からパラシュートで降りてきたアントニオ猪木でした。いやぁ、笑った 感動した。ホントに頭の中が真っ白になりました。新聞によると、国立競技場に9万人以上入ったそうです。6時半から始まって11時前に桜庭の試合が終わり、人混みの中をかき分けて電車に乗って家に帰ったら12時を過ぎてました。今日は朝から図工室の4人はクタクタです。夏休みが必要だな。
格闘技で思い出しました。プロレスが好きだ好きだと言っているうちにだんだんプロレス関係の仕事が入ってくるようになったコンダ君の紹介で、2年ほど前に「新日本からくりペーパークラフト・紙の山本小鉄・俺もやるからお前もやれ、ヒンズースクワット3000回」を試作したことがあります。やはりプロレスファンの編集者経由で小鉄氏本人にプレゼンして、承諾が取れれば会場で大々的に売り出して印税ガッポリだぜ、という壮大な計画でしたが、あれはどうなったんだろうか
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2002.8.16 新人さんいらっしゃい
先月から図工室(ぼくの仕事場の名前です)にメンバーが1人増えました。といっても今度は弁髪のバイト君が増えたわけではなく、新しく入ったグラフィックデザイナーのH君は立派な有限会社の社長さんです。これまで自宅で仕事をしていたのですが、手狭になったので机とマックをしょって引っ越してきました。これで事務所の家賃はコンダ君と3人でワリカンです。少し小遣いが増えました。
そのH君は0才児の父親です。編集者の奥さんと共働きなので、保育園への送り迎えはH君の担当です。朝の8時に子供を送って行ってそのまま出勤。日中バッチリ集中して仕事を終わらせて5時には上がり、保育園へお迎えに行って帰宅しています。ムチャクチャ健康的です。特に急いでやることがなくても10時過ぎくらいまでダラダラしてしまうクセがついてしまったぼくは見習わなければならんなぁと思いますが、土日でも用事がなければつい仕事場に出てしまう性格は、よほどのことがない限り直らないでしょう。何か趣味でも作らにゃならんかなぁ。紙工作だったりしたらヤだなぁ。
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2002.8.12 夏休みに読む本
来週から一週間ほど夏休みをもらいます。前もって予定を入れないと絶対に休めない性格なので、年に一度のぜいたく、海外旅行に行くことにしました。これまでは航空券だけ押さえて、目的地も宿も向こうに着いてからというパターンが多かったのですが、今年はちょっと疲れてしまったので、ホテルもちゃんと決めて1カ所にずっと居ることにしました。あんまり出歩かずに本を読んでいようと思います。
で、問題は持っていく本です。ここ1ヶ月くらいこれがずーっと頭から離れません。
まずハズレはない大好きな作家さんが何人かいて、多分ダイジョーブという作家さんが十何人かいて、この人たちの新作を順番に追いかけていって、2冊に1冊は新しい人に挑戦して、そのうち4人に1人くらいはお気に入りに昇格する、という読書生活を続けていますが、時々降格する人もいたりするので、満足率は平均すると30%くらいです。通勤時間に電車の中で読むならこれでもいいんでしょうが、わざわざ高い金払って飛行機に乗って打率3割じゃちょっとなぁ。大好きな作家さんはみんな寡作な人ばかりで、今週中に新刊のでる可能性はありません。そこそこ好きな作家さんのこれまで読んでいない本は、読まなかっただけの理由はあるのでこれもリスク高し。かといって全部新人さんの本ばかりというのもあまりにも冒険的。
それに加えて重量という問題があります。荷物はなるべく軽くしたいしね。ハードカバーの新刊で読もうと思っている本は何冊かあるのですが、東○圭○とか宮○み○きとか、一時間で200グラム分くらいサラサラ読めちゃうのは旅行には不向きです。一時間で30グラムも読めない京○夏○や、50グラム進んだと思ったら20グラム戻って読み返してしまう高○薫までとはいいませんが、せめて奧○英○くらいのグラムパフォーマンスは欲しいものです。文庫なら言うことなしなんだけど。
そういうわけで、打ち合わせで外に出るたびに本屋に寄って、これまで読もうと思って忘れていた本が見つかりやしまいか、目を皿にする毎日です。何冊か見つけて買い込んだものの、ちょっと偵察のつもりで読み始めたらそのまま最後まで読んでしまってあまりの面白さに後悔してみたり。あぁ苦しい・・・でも幸せな日々です。おすすめの本があったら教えてください。
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2002.8.6 一部のリクエストに応えてコーナー再開・・・
いや、別に閉鎖してたわけじゃないんですけど。
掲示板で話した大阪でのワークショップのことをもう少し。当初の予定では、この教室では市販のからくりキットを使う予定でした。ちょっと難しいかもしれないけど、昨年末に岩手で開いた教室では、お母さんたちに手伝ってもらって2時間ちょっとで完成したし、まぁ何とかなるかなと。もし完成しない子供がいても、紙を切るのが遅いからって死ぬわけじゃなし、それはそれでひと夏の経験、いいんじゃないかと思っていました。でも、呼びかけて参加していただいたからにはやはり時間内にみんなに完成させてもらいたい、という考え方もあるわけで、編集者の方といろいろ話し合った結果、この教室のために新規のキットを作ることになりました。それが前から一度やってみたかった、からくりペーパークラフト・しくみ編。今回準備したのは、カムが3種類で、白い紙に展開図だけが書いてあって、組み立ててハンドルを回すと白い立方体から突き出た白い棒がいろいろ動きます。その動きを何に見立てるか、っていうのは作った人のお楽しみ。
自慢するわけじゃないと言いつつ自慢しますが、けっこう楽しんでもらえたのではないかと思っています。終わってみると、市販のキットを2時間で・・・というのはとんだ思い違いで、小学3年生の子供にはカッターナイフでまっすぐに紙を切ること自体が一仕事でした。そんな子供にサークルカッターまで使わせて、でもうまく切り抜けた子供たちはそれだけで歓声をあげ、あっちこっちから絶え間なく質問の声をかけられ、持っていったデジカメで教室の様子を撮ることさえ思い出さないうちに2時間余りの教室は終わりました。お母さんたちも、最初は子供にまかせていたのが途中で見るに見かねて手を出して、しかもお母さんの方が不器用でしまいには親子げんかはじめたりして。帰り際に子供たちが、自分の作ったからくりを自慢げに見せながら、大声でありがとうって言ってくれたのがうれしかったです。
と、ここで終われば、えぇ話やなぁ、なのですが、もともと人にものを教えるのが本職ではない私、実はもっとうれしかったことがあります。まずは、最初のつかみにペンギンやらまな板やらの完成品を見せた時。ここでウケなかったらこの先の2時間は辛いぞと思いながら恐る恐る箱から出しましたが、いやぁ、想像以上にウケました。あれだけリアクションをもらうとみんなが神様に見えてきます。芸人の気持ちがわかりました。そしてもう一つは、最後に5分間だけ時間をもらって、市販のからくりキットを販売した時。教室開いた後に商品売り込むのもインチキ臭いとは思いましたが、思った以上に売れました。本当にうれしかったです。やっぱり目の前での体験というのは貴重です。「もうお金なんかいりません、どんどん持っていってください!」と、のど元まで出かかりましたがグッとこらえて帰りの新幹線でビールをおいしくいただきました。
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2002.6.26 ブラジルvsトルコを見ながら
ベッカムの真似だ真似だとみんなに言われてへそを曲げたバイトのマスカワ君が、ばっさり髪の毛を切りました。
その翌日、あの選手が髪型を変えました。マスカワ君曰く「まさかこの髪型をする人間がこの世にいるとは思わなかった。」皆さん、ぼくが証人になります。マスカワ君がこの髪型にしたのは、ロナウドよりも一日前です。
どうすりゃいいんだとうなだれるマスカワ君画像
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2002.6.24 ここまでできる抜き加工
というセミナーに参加してきました。紙問屋の竹尾さんが紙にまつわるいろんなトピックをテーマに定期的に開いているセミナーで、ぼくは初めて聞きにいきました。「抜き加工」というのは、パッケージやPOP、ペーパークラフトなどで使われる、紙を不定形の形に抜き取る加工のことです。昔やったトヨタの仕事から最近ではトミーのノベルティまで、これまで何度も世話になってきた技術ですが、職人さんの話を直に聞ける機会はこれまでなかったのでとても勉強になりました。
印刷の立ち会いには何度か立ち会ったことがあります。マックで作業してプリンターのボタンを押せばプリントアウトがスルスルと出てくる、というのがここ数年グラフィックデザイナーの世界ではあたり前になってきましたが(とは言いますが、いざマックに向かうまでがデザイナーの本当の仕事。これは今も昔と変わらず大変です)、これはあくまでも見本。同じ品質のものを何千枚、何万枚も刷ろうとすると、いくら技術が進んだとはいえ、そこは職人さんの腕がモノを言います。インクというのは刷り上がった直後と乾いた後では色が違うのでそこを読んだり、紙や写真によって微妙に印圧を変えてインクの盛りを調整したり。
今回お話やビデオで見せてもらった抜き屋さんの仕事は、印刷以上に個々人の技術が仕事の出来に影響する世界でした。抜き屋さんが紙を抜くためには、抜き型と呼ばれる型が必要です。ぼくらデザイナーが作った型の形をベニヤ板に写し取って、そのりんかく通りに刃を埋め込むための溝を切っていきます。さすがに最近ではコンピューターと連動させてレーザーで切っていくことが多いそうですが、見せてもらったビデオでは、職人さんが電動糸ノコを使いフリーハンドで切っていました(神業だった!)。そしてその溝の形に合わせて金属でできた刃を折り曲げ埋め込んでいく作業は、今でも手仕事です。コンピューターで一辺が5ミリの長方形を描くのは一瞬だけど、それと同じものを金属で作るのは大変です。人によってやっぱり腕の良しがあるそうで、あるパズルの部品の型を作ることの出来る型屋さんは都内に一件しかないそうです。
その後いよいよ抜き屋さんの登場です。オフィスにあるプリンターやハイテク機器を想像したら大違い。もともとは印刷機だったものを改良して作られたという抜き機は、鋼鉄の固まりとギアの組み合わせでできた、機能むき出しの、ほとんど兵器のようなものでした。町工場に設置されたその機械に、作業服を着た職人さんが、印刷された紙を一枚一枚手で差し込んでガッチャンガッチャン抜いていきます。それでも印刷とのズレは1ミリとないんだからいったいどうなっているんだろう?
話をしてくださった職人さんに「抜き加工の現場を知って、あんまり無茶なデザインはしないでください」と、冗談半分で言われました。出席していた、たぶん大多数はデザイナーは、思わず目を伏せながら笑っていました。抜き屋さんや型屋さんに気を遣ってデザインするということはあり得ないだろうけど、出来ることと出来ないことはちゃんと知って、少なくとも、安易なデザインをして後で修正を連発することは止めようと思いました。でも考えてみればこれはどんな仕事でも同じか。
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2002.6.13
この前出させてもらったBSのビデオが届きました。○○にこだわる男性2、3人を毎週とりあげて、そのこだわりについて語るというコーナーです。今回は椅子でした。デンマークにたまたま住んでいたことを鼻にかけ、向こうですっごく安く買った中古の椅子について得々と語る自分の姿は大変にイヤミなものでした。でも頼まれたらまた出ちゃうな。テレビ用のピンマイクというものを初めてつけてもらいましたが、それでもぼくの声はとても小さくてカツゼツが悪くて、これからはもっと大きな声でハキハキと話そうと反省しました。
火曜日は六本木のデンマークレストランでデンマークVSフランス戦を見てきました。アナウンサーも解説者も、フランスが2点差をつけて勝つ、というシナリオにのっとってしゃべっているのが面白かったです。「あと30分で4点、フランス少々苦しい状況になってきました!」普通30分で4点は入りません。そのお店は、向こうで知り合いになった友達に教えてもらいました。デンマーク語ペラペラの彼女は、デンマークチームの通訳として和歌山のキャンプでお手伝いをし、デンマークが決勝進出を決めて日本に帰ってくればまたチームに合流できるということなので、応援の仕方も半端じゃありませんでした。W杯的にはフランスが進んだ方がおもしろかったのだろうけど、そういうわけだからデンマークおめでとう。それにしても南アフリカはかわいそうだった。
高村薫の新刊「晴子情歌」を読み始めました。ガツンガツンとひっかっかる文体がこの人の魅力だけど、まさかこの手で来るとは思いませんでした。いっしょに買ったスティーブン・ハンターの新作、いつになったら読み始めることができるんだろう。
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2002.5.30 いよいよだ
もういいわけするのも飽きました。だいたいこんくらいの更新間隔ですね、このコーナーも。
一ヶ月半も間を空けるといろんなことがありすぎて、何から書いたもんだか分からなくなってしまいます。俊輔の落選、ジタンの肉離れ、セネガルの万引き、小野の盲腸、あぁいろいろあったなぁ。明日からいよいよワールドカップ。4年に1度のサッカーファンとしては、日中は集中して仕事して、夜はなるべく盛り上がりたいものです。時間を見つけて、4年前にコンダ君を日本から呼びつけて行った、フランス大会スチャラカ道中記も書きたいなぁ。でも無理かなぁ。
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2002.4.15 これは大事件
バイト君を雇いました。
ワガハイも36歳にしていよいよ人を使う身になったかと感慨深いものがありますが、グラフィックデザインで大忙しの相棒のコンダ君と二人で折半で、しかも学生君だから週に3日くらいで、しかも時給は○○円だからあまり偉そうなことは言えません。僕のななめ後ろに机を一つこしらえて、紙を切ったり、紙を切ったり、紙を切ったりしてもらっています。
大方の予想に反して「彼女」ならぬ「彼」のことは、これからもこのコーナーで時々触れることになると思いますので、今日はとりあえずお披露目のみ。名前はマスカワ君といいます。これからよろしく。
本人の了承を得たうえでの写真公開(決してこれがしたくて採用したワケじゃないよ)
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2002.3.23
このコーナー見てるぞ、というメールをもらったので勇気100倍。ありがとう、ともえちゃん。お互いがんばろうぜ。
下で書いた、昔の後輩、今では大きな会社のエライ人とこの前飲んできました。彼の歳(今32歳)までくらいが、マック導入以前のデザイン業界を身をもって体験している世代で、紙焼きの話とか写植指定の話でたいへん盛り上がり、盛り上がりすぎてぼくは久しぶりに泥酔していました。目黒駅で起こしてくれたおねえさん、ありがとう。大崎広小路駅のそうじのおばさん、ごめんなさい、ゴミ箱にゲロ吐いたのぼくです。翌日は、掲示板にも書きましたが、デンマークにいた頃の友だちに会いに静岡に行ってきました。椅子の話で盛り上がりました。酒量は自粛しました。今日は、明日おこなわれる学生時代の先輩の結婚式の前祝いということで、遠くから集まった先輩たちと遊びます。昔からあまりこまめに連絡を取る方ではなく、どちらかといえば人に誘ってもらうのを待っている体質で、友だちはあまり多くない方だと思っていましたが、さすがに36年間も生きてきていろんなとこに顔突っ込んでると、気のおけない友だちと呼べる人たちも増えてきました。
えー、なんでこんなプライベートな話を書いているかっていうと、こういう集まりで必ず聞かれるのが「坂って今どうやって食ってるの?」という質問だからです。そんなにオレの印象は貧乏かい。去年の今頃までは、世に出た仕事の数もまだそれほど多くはなく、そう聞かれても「えーとね、知らないと思うけど、こんな世界があってね、それでなんとかね・・・」という歯切れの悪い答えしかできませんでしたが、だんだん作品も増えてきて、メディアでも何度か取り上げていただいて、最近はずいぶん説明しやすくなってきました。思わぬ効果です。今月の末か来月の頭あたりには、先日またまた取材をしていただいた雑誌も店頭に並びます。これでまたいちだんと説明が楽になります。
話かわって。先日奥田英郎の「東京物語」を読みました。これまでに読んだ椎名誠さんや小林信彦さんの業界青春モノは、世代が少し違うので今ひとつリアルじゃない部分がありましたが、奥田さんの80年代の広告業界物語は、モロにぼくが丁稚をしていた頃の話だったので、身につまされながら読みました。「恋のチカラ」の貫井企画の設定とは大違い。ただしリアル過ぎて小説として充分楽しめたかっていうと少し疑問が。80年代、まだ振り返ってなつかしむほど昔ではありません。ヤな時代でした。
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2002.3.16
このコーナー、ずいぶん久しぶりの更新になってしまいました。昨年の世界遺産の連載が終わってホッと一息つけたのも束の間、1月の後半からいろんなことが立て続けに起こり、自分でも全体の状況がつかめないまま気が付くと3月も半ばになっていました。昨日の確定申告の提出でこの状態にも一区切りついたので、今日はちょっと時間をかけて書き込んでみようかと思います。
今回のドタバタのきっかけになったのは、2月頭に受けたMONOマガジンの取材でした。おもちゃの特集号という願ってもないタイミングの号にずいぶん好意的な記事を書いていただき、それを読んだ方々から商品の注文はもちろん、制作や展示の問い合わせが何件も寄せられました。現在進行中の企画もあるのであまり詳しいことは書けませんが、そのうちのいくつかは今後形になっていくだろうと思います。楽しみです。
身近なところでは、他でもない近日発売のMONOマガジンに、ペーパークラフトの展開図が掲載されます。この企画でぼくはペーパークラフト界の禁断の果実『クルマ』に手を出してしまいました。細密系の篠崎さん、田中さん、シンプル系の溝呂木さんによって、ある意味完成されてしまっていると言っていいこの分野で、どれだけ二番煎じじゃない表現ができたかどうかちょっと不安です。3人の型紙を机に並べて、ウンウンうなりながら作りました。もし似てても怒んないでね、お三人さん。
雑誌を見て連絡をくれた中で一番うれしかったのは、10年以上前にぼくが神宮前のデザイン事務所でバイトをしていた時の後輩からのメールでした。「外国に行って日本語教師を目指します!」という、懐柔のスキのない理由をでっち上げてぼくが事務所を辞めるにあたり、その代わりとして入ってきた当時21歳の新人君です。引き継ぎで2ヶ月くらい一緒に仕事をして、歳が近いこともあって何度か飲みに行きました。ぼくは実は憶えてないのですが、当時彼が好きだった女のコに告白する際に、前の晩に男二人で飲みに行ってぼくがいろいろ作戦を伝授したそうです。人ごとだと思ってどーせまた口からでまかせ言ってたんだろうな〜12年前のオレ。でもメールによると、その作戦会議は見事功を奏し、今から8年前になんと二人はゴールインしたんだそうです。すごいな、たまにはでまかせも役に立つもんだ。いろいろあって、引き継いだ事務所は間もなく辞めてしまったそうですが、現在も彼はデザイナーとして活動を続けています。事務所を辞めデザイナーを続けるかどうか悩んだ時にもぼくに電話をくれて、またしてもぼくはエラそうにいろいろとアドバイスをしたそうで、それが心の支えになったと言ってくれてるんですが・・・ごめんよ〜、当の本人はじぇんじぇん憶えてましぇ〜ん。人の意見を疑わずに聞くその素直な性格が君の宝だよ。来週12年ぶりに再会して飲みに行ってきます。すごく楽しみです。
今日はこのへんで。来週はけっこう落ち着けそうだからまた書き込みます。誰か見てんのかな、このコーナー。
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2002.2.1 第一回国際紙工作会議
に、先月末出席してきました。いや今そう名付けただけなんですけど。去年の秋、デザインフェスタを見物に行った時に知りあったニュージーランド人のトニーさんと飯を食いにいった、そういうことです。トニーさんは5年前、日本の大学に数学の研究をするためにいらっしゃいました。でも子供の頃から好きだった紙工作の世界が忘れられず、今は英会話学校の講師をしながら作品を作りためているそうです。その日は「紙のくるま」のミゾロギさんと一緒だったのですが『日本で紙工作をしてる人たちとやっと巡り会えてとてもうれしい』と言ってくださいました。確かに。紙工作を専業にしてる人間が身近にいる人なんて、日本人でもそうはいません。実質ただの飲み会ですので、八割方実りのない話で盛り上がってましたが、やっぱり『紙工作で食っていくためにはどうしたらいいんだろうか?』という話題も出るわけです。これまでも掲示板やメールで何度かこの質問が出ましたが、やっぱり答えのはっきりしない質問です。ホントどうしたらいいんだろう。
とにかく作って人に見せないと、いう当たり前のことしか言えませんでした。でも、ミゾロギさんとかごとうさんとか光武さんとかぼくとか、現在いちおう紙工作を職業としている人間が、それぞれ全然別のきっかけでこの世界に入ってきて、今もそれぞれ違った活動の仕方でやっていてそれでどうにかなってる、という事実はちょっと励みになったのではないかと思います。『日本紙工作作家組合』とかあって同盟を結んでるんじゃないかと思ってたみたいだし。
ホームページを持つことにはとても関心を持ってらっしゃいました。もしかしたら近いうちに”ドードー”とか”キウイ”とか、ちょっと変わった動物のペーパークラフトを楽しめる新しいサイトが誕生するかもしれません。
話少しずれますが、小学生の時に読んだ手塚治虫さんの本に、『人に見せることなど考えずに自分で良いと思うものをひたすら描き続けなさい。良いものを描いていれば必ず人は見つけてくれる。』という一節がありました。上の話と矛盾するようですが、ぼくはこの意見に半分賛成です。
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2002.1.22 英語はむずかしい
一昨日英語で妙なメールがきました。「ぼくのためにペーパーモデルを作ってくれませんか?ついてはいくらかかるか予算を教えてださい。」どこの誰かも何を作ればいいのかも書いてありません。無視しようかとも思いましたが気になったので問い合わせてみました。メール書くのに1時間かかりました。翌日返事がきました。なんでもイギリスのファッションデザイナーで、今度Tシャツの新しいラインを立ち上げることにした、で、そのビジュアルモチーフをポータブルステレオ(ウォークマンのことだよな)にするので、おまけとしてポータブルステレオのペーパークラフトをつけたいんだ、とのことです。Tシャツのモチーフにポータブルステレオ?でもっておまけにペーパークラフト?わけわからんぞ。ま、ゴルチェのシャツとかならウォークマン柄だろうが掃除機柄だろうがあってもおかしくないか。しかし形もサイズもわからんのに見積もり出すのも無理があるなぁ、と思いながらも、適当に相場の値段を書いて知らせました。1時間半かかりました。翌日返事がきました。ぼくのメールにちょっとわからないとこがあるから説明してくれとのことです。しかたないのでまた辞書見ながらメール書いてさっき送信しました。2時間かかりました。
たぶん明日の朝またメールが来てると思います。うーん、仕事にならんぞ。この話はたぶんつづきます。
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2002.1.15 初仕事の話
年が明けてバタバタし始めないうちに「からくり」の新作をまとめてしまおうと、リハビリがてらのんびり作業をしていたら、タイミングよく(?)からくりものの展示や取材の問い合わせがいくつか入ってきました。春までに出せればいいやと思っていましたが、どうせなら新作も一緒に取り上げてもらいたいので、2月前半発売を目指してがんばってます。締めきりが決まるとガゼン集中できるところは、やはり作家ならぬデザイナーの性です。
新作は「まないたの上」です。自分では一番気に入っているものだったし、実際、ネットで見てくれた中高年の男性からはリクエストも多かったのですが、「シリーズのしょっぱなからいきなりこれもなぁ」という変な自粛も働いて、ここまで商品化はしないできたものです。「ためらう男」の評判がそこそこ良かったこともあって、今後はこっちサイド(どっちサイド?分かりますよね)の作品も2つに1つは混ぜていけそうです。「背中に湿疹」も今年中に出すぞー。
まないたの上にのっかっている魚がずっと気に入らなかったので描き直しました。前の方が良かったって言われなきゃいいけど・・・。
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2001年のWORKSHOP NOTE |
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